2009/2/24/

「セーター」


ある日、弟から電話がかかってきました。

「もの凄いものを見せてやるから、目の玉かっぽじってありがたく見ろ（意訳）」

何だか素晴らしく自信がありそうだったので、私は「はいはい」と受け流しながらも、
なんだろう、こっちじゃ放映していないアニメのＤＶＤか何かかなぁ、とぼんやり思っていました。

すると次の休日に、弟夫婦が私の家にやってきました。
彼はふっくらした、暖かそうな手編みのセーターを着ています。
ふとその柄に目をやった私は、それこそ我が目を疑いました。
だって、このデザインなんですもん。

言うまでもありませんが、これは、 大空魔竜ガイキングの腹部をアレンジした、手編みのセーターです。 袖の部分は、上腕部は白く、肩と下腕部は群青色と、きちんと色分けもされています。 本当は、得意満面な弟の顔の部分も映したかったところですが、個人情報がアレな昨今、ご容赦下さい。 「これ、どうしたの？」 私が絶句状態から立ち直って聞くと、弟は、待ってましたとばかりに答えました。 「うちの奥さんに、編んで貰ったんだ」 何でも、弟の奥さんが「セーター編んであげる」と言ってくれたので、 「じゃぁ、オリジナルデザインもできる？」と聞いたら・・・。 「ドット絵のような設計図さえあれば・・・」と言うので、 弟が自らデザイン案を書き、編んで貰ったそうです。

弟の奥さんが、横から口を挟みました。
「これ、デザインがアレなもんだから、裏打ちしないと糸が保持できなくって、大変だったんですよ」
たしかに毛糸が２重になっており、幾分ふっくらとした感じになっていますが、むしろそれがガイキングぽくって良い感じです。

「どうだ、羨ましいだろう！」
「うん」
私とマブは、素直に頷きました。
「ええっ？」
後で妻が驚いています。
「だって、これ、街中に着てくの？」
妻が呆れた目で見ていますが、今度は弟が即答しました。
「うん」

ワガママな弟の要求に、きちんと応えてくれる奥さん。何と素晴らしい夫婦愛でしょう。
私もちょっと羨ましくなって、妻に言いました。

「ねぇ」
「やだ」

何にも言わずとも、私の要求をすべて判ってくれる奥さん。何と素晴らし・・・あれ？

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2009/2/8/

「お祝い」


以前もお姉ちゃんの受験の話を書きましたが、相変わらず彼女はマイペースで、見ているこっちをハラハラさせます。
ある日私が帰宅すると、またしても妻に怒られていました。

「ちょうどいいところに帰ってきた！
　あなたからも、何か言ってやってください！」

聞いてみると、お姉ちゃんは宿題もやらずにマブと遊んでいたようです。
「別にいつもの事じゃないか」
私がそう言うと、妻は何かがブチーンと切れた顔で答えました。

「それだけじゃないのよ！
　この子、勉強してる振りもしないくせに、その後のことだけは調子いいのよ！
　もう、Ｔさん（私の弟＝お姉ちゃんの叔父さん）から、入学祝いに何を貰うのか、決めてるらしいのよ！」

それでモチベーションが上がるんなら、いいじゃないか。
はなから、モチベーションなんかないように見えるけどな。

「何、呑気なこと言ってるの！
　合格して貰うものって、実用品じゃないのよ！オモチャよオモチャ！」
「何」
「えっと、ほら、何だっけ、ガンダムのウィ・・・ウぃ・・・」

見かねてお姉ちゃんが、ぼそっと呟きました。

「ＰＧ（パーフェクトグレード）の、ウィングガンダム」
「そう、それそれ」
「オモチャじゃないぞ。プラモだ」
「どっちでもいいわよそんなこと！」


まぁそんなやりとりが続いた後で。
妻はとうとう呆れ果てて、言いました。

「もう！この子がこんなトンチキになっちゃったのは、全部あなたのせいだからね！」

全部私のせいか？
「そうよ！誰の影響で、こんなトンチキさんになったと思うの！」

そう何度もトンチキトンチキ言うなよ。
お姉ちゃんは普段、キレたり怒ったりすることがあまりありません。妻にここまで言われても、ノホホンとしています。
それでもやっぱり、あんまり言われれば可哀想ですから、私は、お姉ちゃんに向かって言いました。

「（ママだって）そこまで言うことないのにね。
　あんまり何度も言われたら、お前だって、怒（いか）っていいんだよ。
　いや、むしろ・・・たまには・・・
　怒れ！」

するとお姉ちゃんは、間髪入れずに切り返しました。
「鋼（はがね）のサイボーグ！」


この時初めて私は、
ああ、もしかしたら、ホントに全部私のせいなのかも知れないねぇ
と思いました。

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